悔しい心音に望む



しおらしく涙を流しても、ひとつも靡いてくれないってことくらいわかってる。


可愛いして、必死に追いついて、理解示して、同じ場所に立ってみたいはずの恋心、もうずっと粉砕され続けて。


それで今さら傷つけ、とか。
慣れた笑顔が不可と言うから、わらうだけだって。


わがままに内心泣き言。




「近江は私のことを裏切り続けてくれるよね」




一度も、期待通りにいかない。


はじめてすきと言ったときだって。


近江はつめたい声で 『そう』 と呟いて、それから。




「百亜は、」




それから。




「僕のどこが、そんなにいいの」




それからあのときも、訊いた、無機質に。


……近江って真面目で利口で頭がいいはずなのに。


ぜんぜん学習してない不真面目ちゃん。




「ひみつ」




すきな人のいいところなんて、私が知っていればそれでよくない?


って思うし、それはもちろん近江にも適用。


人差し指を唇の前に持っていくと、彼は呆れた表情を添えた。




「きみって悪趣味」


「私にとっては最高」


「僕には理解できない」


「共感は要らないし?」


「僕は、」


「うん」


「百亜に認められるほど、いい人間じゃないと思うけど」







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