悔しい心音に望む



「私のおすすめ読んでくれた?」


「ああ、あれね、妹が喜んで読んでたよ」


「私はきみに読んでほしくて貸したのに」


「王道恋愛少女漫画?」


「すこしは乙女心お勉強して貰いたいなあ」




私のために。


とか図々しいこと言ってるってわかってるよ。


でもこれくらいあからさまにアピールしてるフリしないと伝わんないもん。この堅物。




「きみはもっと為になる本読めば?」




失礼だなあ。


きみのなかで私って、そういう位置づけ?


不敵に口角上げて、冷めた視線で気取って。


余裕ある自分、そんなにすてき?




「読んでるよ〜、心理学の本とか」


「へえ」




でも悪手だよ。




「きみを籠絡するためだって言ったらどうする?」




にこにこして、可愛い仕草をして、ねえ、そういう私をきみはそろそろ知るべきだ。


知らないフリして逃避、子どもじゃないでしょ。




「吐き気がする」




鬱屈そうな表情が清々しくわらって。


今日も簡単に私を裏切った。


バカなの、ひどいよ、百亜ちゃん泣いてるじゃん。


って、胸奥のギャラリーが擁護する。


泣いてないし。何とも思わないし。




「うそつき」




それより、誤魔化し方、なってないよ。








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