悔しい心音に望む
「僕がうそついてるように見えるの?」
「だって下手だよ、頬引き攣ってて」
慣れない笑顔なんて浮かべなくても、私は全然構わない。理解ある女、きみの理想のひとつだ。
可愛くて、バカじゃなくて、理解が早くて、常識人で、やっぱり可愛くて。
そういう女がすきなんでしょ。
って、これくらい覚えてる。
「……鬱陶しい」
「しかたないよ、恋だから」
恋。
恋です。
きみは苦々しく目を細めた。
「それならきみは悪趣味だ」
「私にとっては最高なんだけどなあ」
「違う、」
「え?」
聞き返すときは小首を傾げて。
当たり障りなく笑って、すこしきょとんと声を零す。
それでも目の前の表情は呆れていた。
「好意を持っている相手に、取り繕った笑顔で挑むなんて不誠実だと思う」
ああやっぱり。
清くて真っ直ぐで、私のこと簡単に裏切る。
「私の笑顔がニセモノだって言いたいの」
「そうだね」