悔しい心音に望む
不誠実。
不誠実かあ。
知った気になっちゃってやだな。
それでも外せない笑顔、そろそろ習慣づいているのに。
眼鏡の奥のアーモンドの目に問うわ。
それってそんなにいけないこと?
「じゃあ本当って何?」
私はぜーんぶ、私で。
努力も経験も鏡に映る泣き顔も、ぜんぶ私で、私のもの。
積み重ねてる上で完璧な笑顔を浮かべて。
それが私なのに。
否定するとか傲慢。極まりないよ堅物。
「私は私で、私のものだけど」
だからきみに向ける可愛げも、私のなかで生成されたトクベツな調味料、なんだって、きみは知らないし知る気もないくせに。
取り繕った態度。それを駆使し続けてるのは、きみの方だ。
「私のことばは冗談だって決めつけてる方が不誠実」
不誠実、って。
否定するには便利でしょ。
「それは、」
「ふふ」
弁解なんて無用だけど、と笑顔を向けてみせる。
彼は決まり悪そうに視線を下げて。
溜め息を吐き出しながら用無しの本を閉じた。
「今日は私の大勝利だあ」
「そういう勝負はしてないつもりだけど」
「負け惜しみ言ってると男が廃るよ」
ふ、と解けたつめたさが、間に流れる。