悔しい心音に望む
「百亜」
「なーに、」
「……、言いすぎた」
「わかればいいよ」
ひどく素直になってしまった彼は、眼鏡の縁を指で押し戻した。
「近江」
「何」
「そういうの、たのしいでしょ」
「意味わからない」
あー、まだ駄目かあ。
せっかく素直になってる隙に伝えた恋情。
でも素直に受け取ってはくれない。
かと言って素直に受け取ってくれたなら、驚きで拒否しちゃうかもっていう矛盾。
半笑いで飛ばしてしまう近江の、そういうところはとっても安心できるけど。
ねえ。
んんん。
ちょっとはこっち見てくれてもいーんじゃないの。
「……何。こっち見すぎ」
「近江は、女子に可愛さを求めるわりには自分は変わらないから、不公平だよね」
「不公平も何も目の保養としていてくれたらいいだけで、別に求めてない」
「うそばっかり」
むう、ってむくれてみせたけど。
どうせ向かないその瞳には映らないし、なんか虚しいし、でも会話続けたくて必死だし。
必死だ。
知らないフリしないでよ。
私ね、私はね。
いっつも、私は。
「あのさあ、」