悔しい心音に望む



勝手に私が空気を張り詰めた。


ゆっくり吐き出された言葉、が、ちょっと気だるげで。


失敗したかなあ、って一歩引くつもりで、いた私の。


目が合って。




「百亜だって、僕のこと、あまり信用してないだろ」


「…そうかなあ」




曖昧に濁したの、これこそ失敗。


なんてことはないけれど、すこし不服に見える表情にわらいかければ、近江はきゅっと眉を寄せる。




「そうとしか思えない」


「うんうん、近江ってば疑い深くて小動物みたい」


「はっ倒すぞ」




私がどれほど胡乱で強かな女に見えているのか、わからないし、わからなくていいはずだけど。


そろそろ知って、って言っても無理な不戦敗。


だってこんなこと理解されない。 “ 気づいてほしい ” とか、女々しい桃色の物体。




「見せたくないでしょ、近江は」




本心。音。自分自身。醜い歪み。
見せたくない心。


見せたくないものでも、きみになら教えたって構わないんだ。私は。




「何を」


「ありふれたなかの、いちばん可愛くない感情だよ」




近江は意味わからないって顔をした。




「 “ 可愛い ” とか “ 可愛くない ” とか変な表現が気に入っているのか知らないけど、それならきみは確実に “ 可愛い ” とはかけ離れているね」


「辛辣」


「傷つかないって笑顔してるくせに」


「だって傷つかないから」







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