君は麦わら帽子が似合わない。

「はあ……」

しばらくして、溜息を漏らした司くんは季節外れの長袖をまくり上げながら重たそうな腰を上げた。
線の細い身体を覆い隠す衣服は、まごうことなき黒い無地である。こんな真夏に暑苦しい格好は、本当に彼は夏を知らないみたいだ。いや、この部屋が夏を殺してると言っても過言ではない。壁にかけられたエアコンのリモコンは20度設定だ。汗が引いた私の身体はちょっと寒い。

「重かったら振り落とすから」
「……!いってくれるの?!」
「……あと、麦わら帽子は僕は被らないから」
「私が被る!似合うって評判なんだ!」

そう、麦わら帽子をかぶった私は家族から評判がいい。アスファルト世界の大都会に似合わなくとも、私には似合う。……はず。

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