Destinyー運命の人ー
ー序章ー
「お嬢、そろそろ婚約者をお決めになさらねば、お父様もお怒りになりすよ!」


執事の無上 秋人(むかみ あきひと)が私を追いかけながら言う。



婚約者。



代々花園家ではこの時期にすでに決めていなければいけない。



「いやったらいや!
何回いえば分かるの?!私はあの時の男の子、絢斗(あやと)君以外認めないんだから!」




「お嬢、もうあと3ヶ月で16の誕生日を迎えるのですよ?」




「だからなによ?」




私は立ち止まって秋人を睨みつける。




「はぁ…いいか?
俺はお前が誰と婚約しようがなんでもいいが、さすがにもう決めねぇとお見合いになっちまうぞ??」



秋人は溜息をつき、先程までの口調とはコロッと変わる。



普段はこの喋り方なのだ。




花園家の執事だから、一応敬語なのだが、私とは同い年で幼い頃から一緒にいる友人のようなもの。




2人きりになった時はいつもこうやって喋っている。




「今どきお見合いってないでしょ!
昔の人じゃないんだからね?
どうして好きな人と婚約できないわけ?!」




秋人はいつもいつも婚約者がどーのって私に言ってくる。




お父様に忠実なようだ。




普通、私の執事なんだから私に忠実になりなさいよね!と、内心思いつつもお今は関係ないので、ぐっと抑え込む。




「んなこと言ったって、その絢斗がどこにいるかもわかんねーし、10年以上も前なんだ、顔も変わってるだろ!そう考えると100%会えねぇよ!!」




「なによそれ!」



反論はしたいものの、秋人の言葉に間違いはない。



否定したくても、できないじゃない…




少しくらいは夢見たっていいじゃない。



あの時、私は一目惚れをしたんだから。



婚約者は絶対に、この人にするって。









ーーー10年前

「秋人ぉ〜、どうよ!」



幼い頃私は活発で木の上に乗ってはよくドヤっていた。



「お嬢、降りろよ、落ちたらどーすんだ!!
俺は責任とれねぇからな!」



そんな私を秋人はいつも下から見ては知らん顔をしていた。



「そんなこと言って、秋人にできないことを私がやってるから羨ましいんでしょ??」



「ふんっ、勝手に言ってろ。」



いつもの様に、そうしていた時。



ヒューッと一瞬、強い風吹いた。



その風の勢いで私が被っていた帽子が、飛んでいってしまったのだ。



「あっ!秋人からもらったぼぉーしが!」



私は必死で手を伸ばしたけど、届くはずもなくて…



そのままバランスを崩し、地面に落ちた。




「きゃぁぁぁぁぁーーーー」













「…あれ、あんまり痛くない?」




私はゆっくりと瞳を開ける。



「そりゃそーだろーな。
この俺を下敷きにしやがったんだから。」




そう、私は秋人の上に座っていた。




「わぁっ!ご、ごめん。
でも、男の子なんだからお姫様抱っことか出来なかったの?!もぅ!!」



私はぷくぅと頬を膨らませる。




「馬鹿なこと言うなよな。
重いお前を持てるほどの力なんてねぇよ!
まぁ10年後ぐらいになら出来るかもだけどな〜」



そう言って秋人は笑う。




「重いってなによ!重いって!!」





私は秋人の体をどしどしと足で踏みつける。




「おいっ、いてぇよ!早くどけ!!」




「あっ、そうよね。
帽子を探しに行かなきゃっ」




そして私サッと立ち上がると帽子が飛んで行った方へ走り出す。




「おっ、おい、待て!」



秋人の呼び止める声が聞こえたけど、その時の私は初めて、秋人がくれた誕生日プレゼントの帽子をし見つけ出すのに必死で耳に入ってこなかった。




「どこにあるの…」



ぜぇぜぇと息を切らしながら周りを見渡す。



方角はここら辺のはず。



短い足じゃそれほど長い距離は走れない。



「…そんな、初めてもらったプレゼントなのに。」




私はそのまましゃがみこんで泣き崩れた。




そんなとき、私の前に影がさした。




「これ…君の?」



不意に頭上から声がして顔を上げると、底には可愛らしい整った顔をした男の子がいた。





そして、その男の子は私が探してい帽子を手に持っていた。




「ぁ……うん、私の。
ありがとう!!あなたは?」




私は帽子をぎゅっと抱きしめて男の子に尋ねる。



「僕は絢斗。
その帽子、僕の家に飛んできたんだ。
拾って誰のか探してたら泣いてる君を見て、もしかしたらって思って。
それじゃあね、僕はもう帰るよ。」




言いたいことを全部言ったからか、男の子はすぐに走り去って言ってしまった。




ーー絢斗君。




私は、その名前を深く心に刻み込んだ。








































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