きっともう恋じゃない。
ほどけた恋
◇
「結局、姉ちゃんと眞央って付き合ってんの」
きっかけは弟の薫が落とした一言。
テレビゲームのコントローラーを握りしめ、切り忘れた振動に爪の音を鳴らしながら、時折舌も打ち鳴らす。
テレビの画面にはモヒカン頭の武将が縦横無尽に飛び回る姿が映し出されている。
ピンクのモヒカン頭の武将なんていないでしょってツッコミはうるせえって一蹴された。
薫の毒舌に拍車がかかりつつあることを先日まおちゃんに相談してみたら、そういう年頃なんだよなって薫の肩を持つようなことを言って、なんの解決にもならなかった。
言葉遣いが悪くても態度が横柄でも弟だろっていうのがまおちゃんの意見らしいけど、弟とはいえ言葉のオブラートを剥ぎ取った丸裸の切っ先を向けられたら、わたしだってつらい。
「姉ちゃん、きこえてる?」
目立つモヒカン頭を追いかけ、現実逃避に出かけようとしたところで、わざわざテレビ画面から目を離してまで振り向いた薫と目が合う。
「無視すんなよ」
「付き合ってるように見えない?」
「まったく。てか本気で聞いたんだけど。付き合ってんの?」
本気で、なんて薫は滅多に使わない。
傍から見てもそうなのかと落胆してしまう自分と、そう見えなくても仕方がないと納得してしまう自分がいる。
見える見えないではなくて実際のところを問われているのに言い訳を探そうとするのを見抜いてか、薫から鋭い眼光が飛んでくる。
なんでこの子、テレビの画面を見ていなくても敵をばったんばったん倒せるのだろう。
「好きって言った」
「惚気とかいらない」
「好きって、言われた」
「いや、知らねえって」
気持ちを伝えた日のことを思い出すと、今でも顔が熱くなる。
好きって言ったのは本当。