きっともう恋じゃない。
こんなはずじゃなかったのに。
遠くにいたら会いたいと恋しがって、近くにいると顔を見たくないと泣くだなんて、我が儘が過ぎる。
薫が勝手にお母さんに送ったメッセージのあとの返信は、仕事終わりのお父さんと待ち合わせて外食をして帰ると来ていて、わたしだけがひとりぼっち。
くう、と寂しく鳴くお腹をさすって、サイドボードにのせた籠を漁る。
ゼリーとチョコとクッキーで凌げる空腹ではなくて、ゾンビさながらにふらふらとリビングの冷蔵庫にたどり着くけど、買い出し前のようで簡単にお腹に入れられるものはない。
冷凍の春巻きを三本あたためてかじりつくと舌を焼いた。
悔しくて、かなしくて、さみしくて、なかなか喉を通らない。
今頃はファミレスかラーメンか、たぶん薫とまおちゃんの二人ならラーメンに行っているのだろう。
薄情者め、と毒づいたって、行かないと言ったのはわたしだった。
部屋に戻ってもまおちゃんに明日の予定を聞く気になれなくて、立ち上げたパソコンで動画サイトのトップに上がっていた洋画を吹き替え無しで流す。
この頃はこうして洋画をよく見ている。英語の勉強法として、興味があるのならとオススメしてもらったやり方。
ネイティブの発音の聞き取りに苦戦して最初は何度も巻き戻したし、吹き替えはともかく字幕をつけて観返さないと内容は吟味しきれない。
進路について考えなければいけないのは、わたしもだから。
薫は中三で受験生のくせしてゲームばかりしているように思われがちだけど、勉強時間もしっかりと確保していると知っている。
やりたいことが定まらない。卒業のその先の自分を想像できない。
他校の友人である由麻ちゃんに誘われたオープンキャンパスのチラシは、わたしの通う通信制の高校のロビーでも見かけた。
学校に親しい友人はいないけど、先生との進路相談で今年はとくに専門学校に進学する子が多いと聞いて、情報処理の学べる専門学校を探していたのに、ここに来て語学にも興味が出てきた。