きっともう恋じゃない。


「興味あんの、語学」

「うん。ちょっとだけ」


以前まおちゃんが部屋に来たときにはなかった英語のテキストや辞書が机の上にいくつも並べてある。

こんな話をまおちゃん相手にするつもりはなかったから、震えそうになる喉に飲み物を流し込む。


「じゃあ大学?」

「まだ決めてない。駅前の専門学校と迷ってる」

「あー、結構いろんな学科が入ってるところだろ。俺のところの卒業生も何人か通ってるらしくて、評判いいよ」

「そっか……」


わかっていたことだけど、大学にしろ専門学校にしろ、人と関わっていかないといけない。

苦手でもあって、それ以上に嫌だからと避けてきたことに向き合わないといけない。


まおちゃんの先輩である陽日さん、篠田さん。それから由麻ちゃん。

親しい人は両手に余るほどいらない。この三人とまおちゃんがいればいい。

だけど、これから先、他の人とは一切関わり合わずに過ごすなんてできないから、どうしたって慣れないといけない。


三年生になって少ししたころ、学校の自習室を使ってみないかって先生から提案があった。

授業や定期試験でしか顔を合わせない子たちもたまに使っているし、進路に迷っているのなら情報交換もできるって。

オープンキャンパスも然り。

周りが準備してくれたチャンスをいくつも無下にして、迷ってる悩んでるとだけ口にする自分をまおちゃんには知られたくなかった。

< 13 / 73 >

この作品をシェア

pagetop