きっともう恋じゃない。
「まおちゃんは大学なんだよね」
「そう。もう決めた」
生き生きとした目で、ここからは通えないこと、今よりも帰って来るのに時間がかかることを揚々と話して聞かせてくれた。
月に一度帰ってくるか来ないかの今よりもずっと離れてしまうと聞かされて、どんな顔をすればいいのかわからない。
まおちゃんはたぶん意図的に、頑なに進学先を言わなかった。
無理だってわかってるけど、一緒の大学を目指さないかって提案をしてくれたっていいのに。
部屋には堂々と踏み込んできて、心の色を探ってくるくせに、将来を導いてはくれない。
勉強の一環といいながら、パソコンにかじりついて映画ばかり観ていることが逃避でしかないことを、まおちゃんならきっともう察してる。
「おいで、和華」
両手を広げたまおちゃんの胸に飛び込むと、自分が呼んでおいて驚いたようにかたまる。
まおちゃんの心臓の真上に頬を寄せてすり寄れば、拍動が伝わってくる。
「薫にきいた」
「なにを?」
「姉ちゃんが変って」
まおちゃんと薫の、もっと言ってしまうとまおちゃんとわたしの確執がひとつ解消されてからも、薫は相変わらずだった。
まおちゃんの澄ました顔が気に入らないだとか、あいつの本性を知っていて好く意味がわからないだとか。
散々なことを言っておきながら、何かを譲り受けるときやまおちゃんの奢りで誘われたときはちゃっかり乗っかるあたりが策士だ。