きっともう恋じゃない。
絡み合う恋
◇
「じゃあようやく付き合ったんだ」
最寄り駅の近くにあるこじんまりとしたカフェの片隅で、対面に座る篠田さんに報告を済ませる。
篠田さんは大して驚くことなくおめでとうとお祝いしてくれた。
「陽日さんと由麻ちゃんには言えなくて……」
「あのふたり、和華たちはとっくに付き合ってるもんだと思ってるからな」
由麻ちゃんのお姉さんである陽日さんと篠田さんは二月からお付き合いをはじめた。
ふたりはまおちゃんの高校の卒業生で、いまは同じ大学に通っている。
「それで、報告のためだけに俺のこと呼んだわけじゃないんでしょ」
「あの、相談というか、聞きたいことがあって」
改めて報告をできるのが篠田さんだけだったから、というのがいちばんの理由ではあったけど、本題はその相談事の方だった。
カフェオレの膜をストローでかき混ぜながら、もじもじと話を切り出さずにいると篠田さんが痺れを切らしたように言う。
「須藤のことなのはわかった」
「エスパーですか……?」
「いや、それ以外に俺に聞くことないじゃん」
わたしと篠田さんは友だちじゃない。
知り合った経緯だって、陽日さんに会いに来たときにたまたまそこにいたというだけ。
知り合いの少ないわたしにとっては、それでも近しい存在ではあるけど、篠田さんも然りとはならない。