きっともう恋じゃない。
好きって言った。
好きって言われた。
でも、それだけだった。
付き合おうって話になったわけではなくて、まおちゃんは会えなかった一年間を埋めるみたいにぎゅっと抱きしめてくれたあと、すぐに高校の寮に帰っていった。
メッセージや電話のやり取りはまちまちで、もともとおはようやおやすみの挨拶を送り合うような仲でもなかったから、理由がないと三日四日音沙汰がないのはいつものこと。
幼馴染み出身の恋愛はどれもこんなものなのかなと考えるようにはしていたけど、かおるから見てもわたしとまおちゃんの関係は付き合っているようには見えないらしい。
「会いに行けばいいのに」
「だって、まおちゃんは学校終わりで疲れてるかもしれないし、誕生日でもないし。八月には帰ってくるって言ってたし……」
「はあ? いま六月だけど。二ヶ月も今のままでいいのかよ」
よくない。全然よくない。
会いたいよ。会いたいけど、理由がない。
「姉ちゃんはともかく、学校ってそこそこ楽しめてたらそんなに疲れるもんじゃないよ。誕生日じゃなくていいじゃん。会いたいって言えばいい」
「でも……」
「でもでもだって。姉ちゃんそればっかでなんも変わらねえな」
嫌そうな顔を隠しもせずにかおるはテレビ画面に向き直る。
心なしか荒くなった操作で、それでも敵はひとりも逃さずに倒していく。
今はお母さんもお父さんもいない。
かおるとふたりきりでいたくなくて部屋に戻ると、ベッドの上に放っていた携帯に青いランプがちかちかと光っていた。
期待はしすぎず、開いた通知を片目で確認すると、待ちわびていた人の名前があった。
「……まおちゃん」
嬉しいのに、泣きたくなるのはどうしてなのかな。
三日ぶりのやりとりが嬉しいのに、素直に喜びきれない。
前に連絡したのはわたしからだったから、次はまおちゃんからの連絡を待つと決めて、この三日間ずっと苦しかった。