きっともう恋じゃない。


「どうして和華が自分で聞かないの」

「それは……」

「自分の知らないところでコソコソ嗅ぎ回られるのって俺は嫌だしあいつも嫌だと思うよ。和華もそうじゃないの」


正論を躱すだけの言い訳なんて咄嗟に思いつかない。

真っ向から刺されたごもっともな意見を素直に飲み込むと同時に追い討ちがかかる。


「聞けないんなら理由があるんだろうし、須藤が言わないんならそれにだって理由があるんでしょ。ついでにその理由、ちょっとは心当たりがあるんじゃない」


確信を持って、あえて遠回しに聞いてくるあたりが意地悪い。

近しくない他人だからこそ言葉に気を遣う反面、無遠慮に投げかけていい場面があることをよくわかっている人だ。


「人の心配より自分の心配をした方がいいよ」


ごちそうさま、と言い残して、篠田さんは伝票をかっさらい店を出ていった。

さりげなく奢られたお礼は改めて連絡するとして、最後に落とされた重い言葉が耳の奥に反芻する。


まおちゃんに心配するようなことはひとつもない。

あるとしたらわたしの方だと、わかりきったことを突きつけられて、なにも言い返せなかった。

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