きっともう恋じゃない。


平日の昼下がり、まおちゃんは授業中。

薫も由麻ちゃんも。


高校進学のとき、決め手が見つかるまでは通信制か定時制で迷ったっけ。

大学か専門学校で悩みながら、就職という選択肢が割り込んでこないのは、いまはその選択ができないとわかっているから。


やりたいことの種が胸のうちにある。

それと同時に、これまで意図的に避けてきた他人との関わり方の課題も芽吹こうとしている。


誰にも関わらずに生きていくことは不可能だから。

ある程度は避けられても、必ず誰かと繋がっているものだから。


閉ざした心の開き方をどこかで学ばないといけない。


ふと専門学校のホームページを開いたら、昨日までトップに表示されていたオープンキャンパスのバナーが閉じていた。

予定表をよく見てみると、オープンキャンパスの日程は昨日で、近々二度目の案内が始まるらしい。


由麻ちゃんに誘われた大学のオープンキャンパスを断って、専門学校もネットで調べただけ。

立ち止まった場所から動けずにいることも、どこで、いつ、この場所に留まったのかも思い出せない。


まおちゃんの行く先を知りたいという心の裏側に、口にすることも憚られるような醜い魂胆があることを、篠田さんはきっと見抜いてしまったのだろう。

本当に知らない素振りだったけど、あの様子ではたぶん、なにかを知っていたとしても教えてくれなかった。


専門学校のホームページを閉じたあと、カレンダーに一週間前つけた記念日のマークをなぞる。

この日々が積もっていったって、わたしの選択はわたしが選び取るものだと知っているのに。

積もれば、重なればきっと何かが変わると祈らずにはいられなかった。

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