きっともう恋じゃない。


『明後日、帰るから』


簡素で素っ気ない一言でも、わたしを舞い上がらせるにはじゅうぶん。

明後日は金曜日。

帰ってくるのなら、土日はこっちに泊まる。

四六時中一緒にいられるわけではないけど、少なくとも距離は近くなる。

部屋を出て廊下を歩いて玄関を開けて、隣の家のインターホンを押せばまおちゃんに会えるのだから。


電話をして話したい。声を聞きたい。

だけど明後日には直接顔を合わせられるし、この時間は夕食を終えて他の寮生といるかもしれない。

部屋に戻っていたとしても、課題が出ていたりするはず。


楽しみにしてるね、とメッセージを返したら、それきりまおちゃんからの返事はこない。

返信の必要がないと判断したら返さないのはお互い様だと知っている。

わたしだけがそれは嫌だと言っていいわけがない。


「っ、うう……」


ベッドの縁に座ってクッションに顔を埋める。

思いきり言いたかった。さみしいって叫びたかった。

我慢はつらいって、こぼしたかった。


かおるの言うように付き合っているのかわからないから、わがままを伝えることに踏み切れないのかな。

それとも、たとえまおちゃんとわたしの関係がわたしの望む形を成したとしても、こんな気持ちを抱えたままなのかな。


一度は膨らむことをやめて、必死に押し込めて潰した想い。

もう一度膨らむことを許して、そして許された、大切な想い。

歪でもいいから、きたなくてもいいから、わたしたちだけはこの価値を忘れないようにしたいと思っているのに、それはわたしだけなのかもしれない。

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