きっともう恋じゃない。
案の定、というか何となく予想はしていたけど、席を向かい合わせてすぐに新見くんはわたしに話を振ってきた。
県内の大学と専門学校のオープンキャンパスの案内と、この学内での進路相談も随時受け付けているとアナウンスがあったあと先生は一旦席を外した。
周りも随分と賑やかだから新見くんがちょっとくらい騒いだって誰ひとり気に留めもしない。
「久野さんって頭良い? 成績どんなもん?」
普通そんなことまで聞かないでしょって質問にはさすがに矢澤くんの制止が入る。
新見くんがやたらとわたしに構うのを気にしながら、矢澤くんの先駆で話し合いが進む。
「昨日最後だったし、今度は久野さんから聞かせてもらえるかな」
「進路……」
もう七月も後半に差し掛かるというのに腹を括れないことを、昨日の放課後にちょっとだけ先生に相談してみた。
そういう子は案外わたしのほかにも大勢いる、と根本的な解決にはならないようなアドバイスをいくつかもらっただけで、なにひとつ定まっていない。
「語学系の大学か、情報処理が学べる専門学校、かな」
「大学はわからないけど、専門って駅のところの?」
「うん。そう。行くならそこかなって」
意外にも食いついてきたのは矢澤くんだった。
聞けば、矢澤くんも同じ専門学校を受けるつもりらしい。
いつになく饒舌になった矢澤くんの、進路どころか将来も見据えた話に、新見くんも三宅さんも聞き入っていた。