きっともう恋じゃない。
まおちゃんの前でどんな顔をすればいいのかわからない。
勢いのまま飛び込んだリビングのソファの上に転がって熱い頬を押さえる。
十六年間の幼馴染み期間。
そして、一年間の空白。
空っぽの真っさらな一年があけて三ヶ月が経つのに、以前の関係よりも居心地が悪い。
付き合っているのかと問うのがこわい。
まおちゃんに否定されたら、この三ヶ月はわたしの勘違いということになる。
まおちゃんがあまりコンスタントに連絡を取りたがらないと思うのは、わたしの憶測ではなくて、まおちゃんの口から聞いたことがあるからだ。
友だちなら、家族なら、恋人なら、わたしなら、ちがうかもしれないけど、それこそ憶測の域を脱しない。
薫が放置した携帯ゲーム機が頭にカツンと当たる。
パズルゲームだったら決して届かない薫のハイスコアを追い抜かすべく奮闘してやろうと意気込んだけど、入っているソフトはこの間テレビゲームと同じタイトルだった。
ピンクのモヒカンの武将を操作する気にはなれなくて、テーブルの上にゲーム機を置く。
まおちゃんへの連絡をためらってしまう理由のひとつは、まおちゃんが受験生だから。
どこの大学を目指しているのかは知らないけど、県内で探すにしてもここから通うにはどこも遠い。
高校卒業後は家に帰ってくるという話もなくなってしまうかもしれない。
聞きたいことを何ひとつ聞かないままで、かもしれない、が増えていく。
そのなかから確かなことだけを拾い集めていたら、受験生だからとか寮生活だからって事情が先立って、まず連絡手段が断たれる。
だから、まおちゃんが帰ってきている今は大チャンスなのに。
何も聞けない、言えない自分が情けなくてきらいだ。