きっともう恋じゃない。
「俺はさー、大学行くことにした! バイト先の先輩がすげえ楽しいって。サークルとか入ってみたいし。まあ、俺は推薦厳しいから一般で、落ちたらまた考えるけど」
「平均点……」
「うっわ、それ言っちゃう? 大丈夫大丈夫。親に大学行くっつったらひっくり返って速攻塾の予約入れられたから」
行かせてもらえることになった、ではなくて入れられたというのが何とも言えないけど。
あんまり嫌そうじゃないところを見ると、新見くんのことだからもしかしたらもしかするかもしれない。
「新見くん、あのね」
今日ここに来てもらったのは、こんな話をするためではないから。
新見くんは本当に表情が豊かで、さっきまでは笑っていたのに今は面白くなさそうな顔をしている。
「やっぱり、新見くんとは遊びに行けない」
結局、由麻ちゃんたちは誘わなかった。
誰を連れていくとしても、そこに新見くんがいるのなら答えは変わらない。
「なんで? ただ遊ぼうってだけでも駄目なん?」
「告白の返事は変わらないってわかってくれるなら、いいのかもしれないけど……」
彼氏がいるから男友達は作らないだとか、遊びに行かないだとか、そういう決めごとはまおちゃんとしていない。
わたしの知らない場所で学校生活を送るまおちゃんに、いちいち逆のことを言っていたらキリがない。
だけどもし、まおちゃんに好意のある子がまおちゃんのそばにいて、突っぱねられないでいると想像してみただけで、胸が引き裂かれそうな思いだった。
同じことをしたくない。
新見くんにも、期待をさせるようなことはしたくない。
恋愛って、真っ直ぐでいたいことには頑張れるのに、目を逸らしたいことには向き合えなくなってしまう。
想うよりも想われることの方が、ずっと切ない。
自分の抱えた想いの深みは理解しやすいけど、人の胸のうちなんて、まして気持ちの重みだなんて、どうしたってわからないから。