きっともう恋じゃない。


「ファミレスとラーメンどっちがいい?」

「まおちゃんの顔を見なくて、隣り合わせにならないところ」

「その要望に沿うならラーメンのあとにファミレスでデザートになるけど」

「どっちも嫌だ」


ああいえばこう言う、のはお互いさまとしてこのままでは簡単に言いくるめられる。

薫は助けてくれないし、打開策なんて出てこない。


恥ずかしさで全身が火照るのも、後ろから抱えられていては体温が伝わってしまうのも、恥ずかしくてたまらない。

せめて薫と目が合わないように、まおちゃんに触れる部分が少なくなるように、顔を俯けて体を縮めこむ。

顔を隠したくて触れた目元が火傷しそうなほど熱くて、外から見たらきっとひどいことを想像すると、目の奥に別の熱がこもる。


悲しくて泣いて嬉しくて泣いて痛くて泣いて、羞恥でも泣けてしまうなんて、人間の涙って機能に感情をリンクさせたのは間違いだったと、人を作った神さまに言いたい。


「はっ? 和華、なんで泣いてるんだよ」

「も、やだ。離して」

「いやいや、離せるかって」

「離してくれないと、噛む」


脅しにもならないはずなのに、いっぱいいっぱいだということはようやく伝わったのか、まおちゃんは腕の力を緩めてくれた。

即座に腕から抜け出して、薫の横を過ぎ部屋に駆け込む。

念のために鍵はかけておいたけど、しばらくすると玄関の開閉音が聞こえてきて、まおちゃんも薫もこの部屋には来なかった。

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