貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 欄悠は、紅華が蔡家の一人娘だという事を知った後も、他の求婚者のようにあからさまに家の話をすることはなかった。ただひたすらに紅華に優しくしてくれた。紅華の知らない素晴らしい景色を見せに連れて行ってくれたり、突然様々な美しい贈り物をしてくれたり。

 それらはすべて、紅華を懐柔するための演技だったのだ。

 彼は、最初から蔡家の娘だと知っていて近づいてきたのだろう。紅華の父が蔡家と李家の婚姻を許さなかったので、矛先を紅華に向けたに違いない。

 そんなことも気づかずに浮かれていた過去の自分を、紅華は張り倒したい気分だった。

 すべてが、紅華ではなく蔡家として話が進む。この時代、娘の立場はそういうものだと理解はしているが、欄悠に出会って知ってしまった。

 愛する幸せを。愛される喜びを。

 結婚とは、そんな幸せな日々が続いていくものだと思っていた。自分は、一生を仲睦まじく暮らしていける最愛の人と、幸せな結婚ができると思っていたのに。
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