貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「黎晴明だ。この度、陽可国新皇帝として即位した。顔をあげよ」

 凛とした声に、男は愕然とする。

(馬鹿な?!)


 普段のなよなよしい影は欠片も見えず、そこには堂々とした陽可国の皇帝がいた。

 晴明は、いつもそうだ。普段はいっそ気が弱いかと思うほどに穏やかな性格なのに、時折こういった正式の場で晴明の放つ威厳は、晴明反対派の自分でさえも自然と頭がたれるほどの圧を感じる。

(くっ……しょせん、見掛け倒しにすぎん。普段の様子を知らん奴が騙されているだけだ)

 男は、拳を握りしめた。

(……次こそは……)

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