貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「本当にお前は間違えないんだな。……心配ない。痺れもとれたし、なんの後遺症も残ってないよ。今はもう休んでる」

「よかった」

 紅華は、ほ、と胸をなでおろす。

「それはそうと、なんで天明様が?」

「留守番、兼、宿題の片付け」

 紅華は、まだ新しい墨の匂いのする書類の束を見渡した。


「勝手に御璽など使ってよろしいのですか? 皇帝陛下のお仕事でしょう?」

「だから、内緒にしておいてくれ。晴明には許可をもらっている」

「はあ。そうだ。睡蓮がこちらにきませんでした?」

 その言葉に、天明はのんびりと微笑む。

「晴明についているよ」

 嘘をついている顔ではなかった。
 睡蓮が一緒にいてなんの騒ぎも起きていないのなら、晴明の症状も落ち着いたのだろう。紅華はようやく安堵することができた。

「そうですか。わかりました。晴明様のご無事がわかれば一安心です。失礼いたします」

 そのまま戻ろうとした紅華を、天明がひきとめた。
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