貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 きびきびと入ってきたのは、若い官吏だった。紅華の姿を見て、ぎょ、としたように足をとめる。

 こちらも、ぎょ、とした紅華があわてて部屋をでようとすると、天明はやんわりとそれを止めた。


「せっかくの君との時間なのに、仕事の話ですまないね。少しだけ、待っていておくれ、可愛い人」

 歯の浮くような天明の言葉に、紅華は再び顔を真っ赤にする。

 紅華にしてみれば、夜更けに男と二人でいるところを見つかった気まずさで動揺したが、相手が晴明なら自分たちは夫婦なのだ。正確にはまだ貴妃ではないのだが、宮城の人々はすでに紅華を貴妃として扱っている。

(大丈夫、おかしくない。夫婦なんですもの)


 紅華が必死で自分に言い聞かせていると、その若い官吏も赤い顔で直立不動になった。

「お、お邪魔いたします!」
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