貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 睡蓮が、目を見開く。

「紅華様……」

 紅華の頬に、一筋の涙が流れていた。は、と自分でも気づいて、紅華はあわてて涙をぬぐう。

「や、やあねえ。ちょっと私もびっくりしたみたい」

「紅華様、私は……」

「睡蓮のせいじゃないわ。でも、ごめんね。少し心を整理したいから、先に部屋に帰っていてくれる?」

 戸惑いながらも、睡蓮は、はい、と答える。そして振り返り振り返り宮に戻っていった。その後ろ姿を、紅華は、じ、と見送る。


 しなやかな細い体。白い肌。乱れた髪すら、女性としての色気が匂い立つ。紅華よりもよほど、睡蓮の方が妃として申し分ない美しい女性だ。少なくとも、紅華はそう思う。天明が睡蓮に惚れていたしても無理はない。
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