貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
第五章 救出
「いたか? 睡蓮」

 息を切らして晴明の部屋に入ってきた睡蓮に、天明は勢い込んで聞いた。

「いえ、こちらにはどこにも」

「ったく、どこいったんだ、あいつは!」

 苛立たし気に天明が壁を殴る。

「それより天明様、今は陛下もお姿をだしていらっしゃいます。後宮内とはいえ、あまり出歩かれて人の目に留まるのは……」

「そんなこと言っている場合か!」


 一人になりたいという紅華を残して部屋に戻った睡蓮だが、その紅華が昼を過ぎても姿を見せない。心配して見に来たが、紅華の姿はどこにもなかった。

「睡蓮、天明」

 時をおかずして、晴明も急ぎ足で部屋に入ってくる。天明と晴明が一緒にいるところをみられたらまずい。三人はすばやく、隣の寝室へと移った。

 後宮内にある晴明の住まう水晶宮は後宮内で一番大きく、複数の部屋から成る。

「まだみつからないのか?」

 天明に聞かれても、晴明は首を振るしかない。晴明は、真剣な表情で言った。
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