貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「まだそうと決まったわけじゃない。下手に動いて、こっちの動きを悟られたら……」

「だが! こうしている間にも、紅華の身が……!」

「紅華殿は、仮ではあるが正式に私に認められた貴妃だ。もしやつらの手に落ちていたとしても、こちらの動きが何もないうちはやつらだって手出しはしないだろう」

「……くそっ!」

 天明は乱暴に晴明の手を払ったが、部屋を飛び出すことはしなかった。


「どうしたらいいんだ……!」

「とりあえず、紅華殿の探索は秘密裡に続ける。もし本当に奴らの手に落ちているとしたら、すでに宮城内にはいないかもしれない。至急城外に出た者たちも調べさせよう。だから」

 晴明は、ぽん、と天明の方に片手を置いた。

「冷静になれ、天明」

 その一言を受けて、天明は大きく息を吐いた。目を閉じたのはほんの束の間、再び目を開けた時には、天明の瞳は落ち着きを取り戻していた。

< 174 / 237 >

この作品をシェア

pagetop