貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「取り乱して悪かった。もう大丈夫だ」

 それを確かめて、晴明は微かに笑う。

「そんな風に取り乱す天明は、初めて見たな」

 言われて天明は、ばつが悪そうに晴明から視線をそらした。

「お前だって紅華が心配じゃないのか?」

「もちろん心配だよ。私だって、もし睡蓮が同じようにいなくなったら、こんな風にお前に声をかけることもできないと思う」

 ちらりと晴明は睡蓮を見つめた。

「晴明様……」


「紅華殿は、必ず無事に見つけてみせる。だから、睡蓮も心配しないで」

「はい」

「それと」 

 晴明の目が、す、と細くなった。その顔は、普段の彼からは想像もつかないほど冷たく厳しい。天明は、無意識のうちに息を飲んだ。


「この先も、紅華殿や私の大切な者たちの命を狙うものは許さない。陽可国の平安を乱すものは、すべて消えてもらう」

 外に見せている晴明は、穏やかで優しい。必要があってそうしているわけだが、それも確かに晴明の一面だ。

 だが、皇帝の責任を負っている自覚を持った時の晴明は、亡き父皇帝と同じ威厳と覇気をまとう。

(やっぱりこいつは、皇帝の器だ)

 そのことに気づかずに皇帝失格の烙印を押す愚か者を、このまま野放しにしておくわけにはいかない。

 天明も、顔を引き締めた。

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