貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「ありがとう。でも、いいのよ、こんなに高いものでなくて。私、欄悠のくれるものならなんでも嬉しいもの」
 紅華は小さく頭を動かして、かんざしをしゃらりと鳴らす。

「気にしなくていいよ。確かになかなか手に入らない貴重なものだけど、君に似合うと思ったらどうしても欲しかったんだ。苦労して手に入れたかいがあったよ。ところで、急にどうしたんだい?」
 どうしてもすぐに会いたいと文をもらって、欄悠はいつも彼女と待ち合わせに使っている河原へとやってきたのだ。
 人気もまばらな町はずれの川のたもとは、紅華や欄悠でなくとも、恋人たちが愛を囁く場所としてよく使われている。

 紅華は、表情を引き締めて欄悠を見上げた。
「欄悠、私と逃げて!」
「え?」
 はっしと腕をつかまれて、欄悠はきょとんと聞き返す。

「逃げる? どこへ?」
「どこへでもいいの。欄悠と一緒なら。私……私、後宮へ上がることになってしまったのよ」
 とたんに欄悠の顔がこわばる。
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