貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「これからも、私は貴妃として……いえ、淑妃でも賢妃でもかまいません。どうか、皇帝陛下のご寵愛を求めてもよい立場を、私にください」

 泣きそうな、それでいて笑いたいような表情になった睡蓮とは逆に、晴明は、ぱ、と満面の笑みを浮かべた。

「そうか。決めたんだね」

「はい」

「ありがとう。……構わないよ。このまま貴妃として、皇帝を支えておくれ」

「はい」

 そう言うと晴明は、うつむいてしまった睡蓮に向かって手を伸ばした。


「おいで。睡蓮」

「え?」

 顔をあげた睡蓮は、おだやかに呼んだ晴明を仰ぎ見て瞠目した。

 優しそうな笑顔はいつもの事だが、その目には今まで見たことのない強い光が宿っている。

「陛下……あの、どこへ?」

「これから何があっても、僕を信じて」

 困惑したまままじまじと晴明を見つめていた睡蓮は、状況がわからないながらも、こくり、と頷く。
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