貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「じゃあ、行ってくるよ、天明」

「ああ。しっかりな」

 しっかりと手をつないで二人が出て行くと、紅華は天明に聞いた。


「陛下は、どこへ睡蓮を?」

「多分、宰相のところだ」

「宰相?」

「お前が背中を押してくれたんだな」

 嬉しそうに言ったその目は、とても穏やかだった。

「私が? 何をです?」

「お前がはっきりと決めたんだ。晴明だって、ここは男として決めなければいけないところだろう」

「では」

「きっと、睡蓮を後宮に入れる話だ。とりあえず妃が二人いれば、しばらくは議会も静かだろう。ああ、俺もこれでやっと、肩の荷がおりた。もうあの二人は心配しなくていいな」

 すっきりとした顔で言うと、天明は紅華の前に立つ。

「……で、お前は本当にいいのか?」

「何がですか?」

「このまま、後宮の妃として残って本当にいいのか?」

 紅華は、一度目を閉じて大きく深呼吸した。そして落ち着いてから目をあけると、正面から天明を見つめた。

 運が目の前にきたら、迷わず掴むこと。父の言葉が頭をよぎる。
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