貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
番外編 婚礼の夜
天明は、自分の宮で長椅子に寝そべって書を読んでいた。
読んでいたといっても、頭にはいるわけでもなく、ぼんやりと目が字を追っているだけだ。
今夜は、皇帝の婚礼が大々的に行われている。晴明と、その皇后となった睡蓮が、今頃たくさんの人々に囲まれて祝福されているに違いない。その中には、正式に貴妃となった紅華も含まれている。
けれど天明が宮中の儀式に出ることは決してない。こうしていつも通りに黒曜宮でおとなしくしているだけだ。
夜もふけてきて眠らなければならないとは思うのだが、眠気はいっこうに訪れてはくれない。
天明はむくりと起き上ると、扉をあけて中庭へと出る。満月に近い月が、明るく草木を照らしていた。さく、と足元で草を踏む音だけが耳に響く。
今までもこんなことは当たり前だったのに、今夜の晴明はひどく珍しい感情に囚われていた。
(寂しい)
読んでいたといっても、頭にはいるわけでもなく、ぼんやりと目が字を追っているだけだ。
今夜は、皇帝の婚礼が大々的に行われている。晴明と、その皇后となった睡蓮が、今頃たくさんの人々に囲まれて祝福されているに違いない。その中には、正式に貴妃となった紅華も含まれている。
けれど天明が宮中の儀式に出ることは決してない。こうしていつも通りに黒曜宮でおとなしくしているだけだ。
夜もふけてきて眠らなければならないとは思うのだが、眠気はいっこうに訪れてはくれない。
天明はむくりと起き上ると、扉をあけて中庭へと出る。満月に近い月が、明るく草木を照らしていた。さく、と足元で草を踏む音だけが耳に響く。
今までもこんなことは当たり前だったのに、今夜の晴明はひどく珍しい感情に囚われていた。
(寂しい)