貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 こんな日が来るとは、天明は思っていなかった。未来を望むことに慣れていない天明は、差し出された幸せを手放しに受け取ることができない。
 きゅ、と紅華が天明の手を握り返した。

「幸せになりましょう。一緒に」

「紅華」

「あなたの幸せを、みんなが望んでいます。晴明様も、睡蓮も、皇太后さまも……そして、私も。誰か一人が欠けても、それは本当の幸せではありません。だから、みんなで幸せになりましょう」
 言葉を詰まらせた天明に、紅華はそっと寄り添う。

「今夜は、戻りません」

「ん?」

「朝まで……一緒に、いてください」
 その意味を悟った天明は、おもわず笑みが浮かぶのを止められなかった。と同時に、なぜか泣きそうになって、自分に添った細い体をそっと抱きしめた。

(許されるのか、俺に。この幸せを丸ごとこの手にすることが)
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