貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「お前も帰るぞ」

「俺はもう少し紅華殿と親交を深めてから」

「お前ばかり話すのはずるいじゃないか。いいから来い」

 くだけた晴明の物言いに、紅華は目を瞬く。

(ずるいって……ナニソレ、かわいい)

 皇帝相手に、笑うのはそれこそ失礼だ。顔には出さず、紅華は心の中だけで微笑むことに成功した。


 天明は肩をすくめると、晴明のいる扉へと向かった。そして紅華とすれ違いざま、彼女だけに聞こえる声で小さく囁く。


「……」

「え?」

 それきり振り返りもせずに、天明は部屋を出ていった。


(なに? 今の言葉は……)

 紅華は、呆然とその姿を見送る。

「蔡貴妃様?」
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