貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 やけに険しい視線で見送る紅華に、心配そうに睡蓮が声をかけた。その声で、紅華は我に返る。

「いえ、なんでもないわ。……本当にそっくりなのね、あのお二方。他のご兄弟もあんな顔しているの?」

 なんとなく今の天明の言葉については話せずに、紅華は別のことを聞く。睡蓮は、ゆるりと首を振った。


「いえ、ご兄弟の中でもお二人は特に、先々代の皇后……お二人のおばあさまによく似ておられます。他の方々は年も離れておりますし、あれほどに似てはおりません」

「そう。とてもきれいな方だったのね」

 二人とも黙って立っていれば相当の美丈夫だった。

(同じ歳、ということは、天明様は第二皇子なのね。何を考えていらっしゃるのかしら)


「あの、貴妃様」

 紅華が考えこんでいると、おずおずと睡蓮が声をかけてきた。

「なあに?」

「天明様のことは、他の方にはあまりお話にならないでください」

「え、どうして?」

 睡蓮は、少し考えてから口を開いた。
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