貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「そんなご心配は無用でございますわ。今日は、お越しくださいましてありがとうございます」

「私も、こちらへくる時間を心待ちにしていたんだよ」

 晴明は、睡蓮に促されて長椅子に座る。その睡蓮の様子を目の端に入れて、紅華は首をかしげた。

 (あら?)

 普段の睡蓮は、常に笑顔を絶やさず人当たりもいい。なのに、今の睡蓮の表情は、つきあいの長くない紅華から見てもやけに硬く感じる。

(そう言えば、初めて睡蓮に会った時も、そんな風に感じたんだっけ)

「今日は紅華殿に報告があるんだ」
「あ、はい。どんなお話でございましょう」

 我に返った紅華に微笑むと、睡蓮が目の前に置いたお茶を晴明は優雅な手つきで持ち上げた。温かさが胸にしみたのか、一口飲んで、ほう、とため息をつく。安堵が広がるその表情があまりにも優し気で、紅華は我知らず見とれてしまった。


(美しい方……)

 気を利かせたのか、そのまま睡蓮は部屋を出ていってしまった。

 二人きりになると、変に緊張してしまう。

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