貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 今までの言動は、欄悠の冗談だったのだ。悪い冗談に心がつぶれそうになったが、きっと謝ってくれる。そうしたら、少し拗ねてからしかたないわね、と許してあげよう。紅華はそう思いながら戻ってくる欄悠を見つめる。

 けれど欄悠は、表情も変えずに、紅華の頭にあったかんざしを抜き取った。結っていた髪がふわりとほどける。

「これ、返してもらうね。君を釣るためならと思って奮発したのに、結局無駄になっちまった。せめてこれだけでも返してもらうよ」
 そして今度こそ、振り向かずに去っていく。

 突然のことに頭が真っ白になっていた紅華には、たった一つだけわかったことがあった。
 彼だけは違うと信じていた。他の婚約者のように、家の財産目当てではないと。紅華だから愛してくれていると。

 それがすべて、計算された嘘だったと、紅華は悲しくも悟ったのだ。

「……っの、大嘘つき!」
 気が付いた時には、紅華は自分に向けられた広い背中に飛び蹴りをくらわせていた。
 
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