貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
第一章 皇帝陛下
「今日は宮城からの使者がくるから、おとなしくしていろと言っただろう」

「はい、と言った覚えはありません」

 でん、と椅子に腰かけて言った蔡汀州の前で、立ったままの紅華は、ぷい、とそっぽを向く。

 ただでさえ失恋の痛手に落ち込んでいるのだ。この上、父親のつまらない説教など聞きたくもなかった。
 なぜか埃まみれで髪を乱し怒り心頭で帰ってきた娘をしげしげと見ながら、汀州はため息をつく。

「まあいい。お前抜きでも話はついた。お前の後宮入りだが、来月に決まったぞ」

「行く気はありません」

「本当にお前は変わり者だな。後宮の妃に選ばれたとなれば、国中の娘が歓喜するというのに」

 苦笑する汀州に、紅華はかっと目を見開いた。
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