貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
(どいつもこいつも蔡家蔡家蔡家って! 好きでこの家に生まれたわけではないわ!)

 そうは思っても、さすがにそれを自分の父に言わないだけの分別はある。紅華とて、父や家族が嫌いなわけではない。ただ、常に自分につきまとう蔡家という肩書が嫌なだけだ。

 紅華の生家、蔡家は、陽可国随一の商家と言われる財産家だ。他国との取り引きも多く、その財力は貴族すらもしのぐと言われる。国のめぼしい美妃を後宮にそろえた皇帝は、次は蔡家の財産に目をつけたのだろう。

「とはいえ、さすがにこちらもお前の歳を考慮して、最初は皇太子妃として打診したのだがな。それは、宮城から断られた。なぜか知らんが、皇太子妃はまだいらんそうだ」

「若ければいいというわけでもありません!」

「何と言おうと、宣旨が下ったことは動かぬ事実だ。断れば、お前どころか私の首まで吹っ飛ぶ。あきらめるんだな」

 そう言われてしまえば、紅華にはそれ以上何も言う事は出来ない。汀州は嬉しさを隠せない顔で言った。

「これで我が家も、貴族と縁続きか。それも、皇族とは! いや、めでたいめでたい」
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