貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「官吏の方でした。お顔までは覚えておりませんが……左側のかなり前の方にいた方だったかと思います」

 紅華も、天明から視線をはずさなければ気づかなかった位置に、その官吏はいた。


 それを聞いて天明は考え込む。その姿を見ながら、紅華ははっきりと聞いてみることにした。

「もしかして天明様は……」

「お待たせしました」

 その時、扉があいて睡蓮と、もう一人老年の男性が入ってきた。

「陛下、お怪我をなされたとか」

 心配そうに言ったのは、この宮城の典医だった。


「心配はない。少し、打っただけだよ」

 その瞬間から、天明はまた晴明になる。
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