貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「娘を金で売ったのですね」

「人聞きの悪い。お前だって、妃となれば、のんきな暮らしができるじゃないか」

「だからって、じじいの妻なんて絶対嫌ああああああ!」

「じじいではないというに。それに、運というものはいつでもあるものではない。目の前に現れた時に迷わず掴む者だけが、成功を手に入れることができるのだ」

「それは商売の話でしょう? 結婚までそんな風に扱われては、私の気持ちは」

「紅華」

 ふいに、父の声が低くなった。

「もう決まったことだ。この婚姻で、我が家は貴族の仲間入りをし、ますますの発展が望める。お前の一存でどうこうできるものではないことくらい、わかっているだろう?」

「でも……」

 それが事実だということがわかるだけに、紅華の反論は弱い。紅華が黙り込んだのを見た汀州は、また笑顔に戻る。

「いや、めでたいめでたい」

 軽い足取りで汀州は、部屋を出て行った。残された紅華は、ふくれっ面のまま父親のいなくなった椅子にどすんと座り込む。
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