貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「おや? 待っていてくれたとは、嬉しいね」

 案の定、そこにいたのは、天明だった。その手には、大きな数本の牡丹を持っている。

「そんなわけないでしょう」

「照れた顔もかわいいな」

 口の減らない天明に、む、っとするも、元気そうな様子を見て紅華は安堵した。


「お怪我のご様子は、いかがですか?」

「まだすごい色しているが、薬のおかげか痛みはあまりないな」

「そうですか」

 そう言って微笑んだのはおそらく無意識だろうと天明は、その表情に気づかないふりをした。

「紅華こそ、怖い思いをさせて悪かったな」

「驚きはしましたけれど」

「肝の据わったお嬢さんだ。はい、お土産」

 渡された牡丹から、甘い香りが漂う。

「どうしたのですか、これ」

「きれいに咲いていたから。昨日の詫びだ」

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