おはよう世界
「芽衣、ちゃん……」

芽衣は無表情のまま立ち上がり、いじめっ子たちを睨む。そして口を開いた。

「パンくらい自分で買いに行け。そんなこともあんたたちはできないわけ？心音には今校舎を案内してもらっている途中なんだ。さっさと失せろ」

「な、何よ！ちょっと美人だからって！！」

「生意気なんだよ！！」

いじめっ子たちはそんなことを言いながら去っていった。心音はホッとして「芽衣ちゃん、ありがとう」と言う。振り向いた芽衣はあの時のような優しい顔、そう思っていた心音は芽衣の冷たい目に驚いてしまう。

「どうして、そんな顔なの？」

心音が訊ねると、「あんた何も変わってないんだな」と呆れたように芽衣は言う。

「あたしは人をいじめる奴が嫌いだ。でもな、自分から逃げる奴はもっと嫌いだ」

そう言い、心音の前から芽衣は立ち去っていく。その後ろ姿を呼び止めることなど、心音にはできなかった。

心音の目から涙がこぼれ落ちる。弱い自分がますます嫌になっていった。
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