借物の恋【中学生日記③】
「その日だけでいいのです、神様。ジャンジャン雨を降らせ、体育祭を中止にしてください」
先週からオレは、機会あるごとにそう祈りを捧げていた。
だが、その当日は……
窓の向う側。しきりに鳴く小鳥の声で目を覚ます。
カーテンの明るさが、これ以上ないくらいの晴天であることを教えてくれていた。
ポン、ポン、ポポーン……
花火の音だ。
目覚し時計を見る。
am6:30
体育祭実施のお知らせだった。
「はぁ── 」
大きくタメ息をつき、オレは布団を抜け出した。
重い足どりで校舎に近づく。
朝一番から、拡声器が軽快な音楽を流していた。
放送部の奴らめ、その音楽、耳に突き刺さるんだよ。
悪態をつきながらも、リズムに合わせて歩いてしまう。そんなオレが、実に悲しかった。
この喧騒から早く逃れたい…… ただそれだけを、オレは願っていた。
この忌まわしい、体育祭という学校行事よ、早く過ぎ去ってくれ……