仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
新婚夫婦、すれ違い中
「あんたねぇ、まだ解決してなかったの?」

 そう言って呆れたように笑ったのは、友人の柳真里(やなぎまり)だった。

 日曜日の午後。お昼どきも過ぎた今、町外れのカフェに人の姿は少なくない。お喋りを楽しむ客の数も当然多いのに、真里の声はやけに大きく響いて聞こえた。

「まだもなにも、前に相談したときからなんにも進展ないの。そんなに簡単に解決できるなら、私だって苦労してないよ」

 真里よりは声を抑えながら言って、すっかり氷が溶けてしまったアイスティーを口に運ぶ。

 ――皆崎紗枝(みなさきさえ)、二十八歳。

 ほんの三か月前まで望月(もちづき)だった私は、六つ年上の皆崎和孝(かずたか)さんと結婚したことで苗字が変わった。

 恋愛結婚ではなく、お見合いによる結婚である。
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