仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「だって私、この仕事をやろうと思ったのは『幸せな夫婦を応援したい』だし。学生の頃も、よくキューピッド役だったりしたんだよね。人の恋愛を後押しするのが好きっていうか」

「じゃあ天職ってわけだ。いいねぇ」

「おかげさまで毎日楽しいよ」

「あはは。でも今回はさすがにちょっと大変なんじゃない?」

「……あー、うん。まあそうだね」

 美香に言われて、今現在担当している顧客のことを思い出す。

 そのご夫婦は今年、結婚四十年目を迎えるそうだった。結婚当時は式らしい式ができず、かといって改まって行う機会もないまま、それだけの時間をともにしてきたらしい。

「でも、大変だけどなんとかしたいって思うよ。だって四十年目のお祝いとして結婚式をするんだよ」

「けどさ、あと三か月で式でしょ?」
< 10 / 394 >

この作品をシェア

pagetop