仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 その人物も他人との交流は求めず、感想のメモとして活用している。内容は淡々としていたものの、アンティークが好きでなければ同じ投稿を続けられないだろう。

(ちょっと気になる、かも)

 幸い、アカウントの主の名前は覚えている。

(『サキ』さんね。あとで検索してみよう)


 その夜、私は偶然駅で真里と遭遇した。

 もともと近い場所で働いていることは知っていたけれど、こうして帰宅時間が噛み合うのは初めてのことである。

 ガラガラに空いた電車に乗り、並んで席に座った。

「今日は残業なかったの?」

「課長に投げてきた。いい加減、私に押し付けるのはやめなさいって」

「苦労させられてるって言ってたね……」
< 109 / 394 >

この作品をシェア

pagetop