仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 そう言ったところで、真里は「他人事みたいに言うんじゃない」と怒るに違いない。

「でもね、いいこともあったんだよ」

「それよ、それ。そういうのを聞きたかったの。なに?」

「趣味が合いそうな人をSNSで見つけたの」

「却下。私のときめきを返しなさい」

「ええ……? なんでときめいたの……?」

「夫婦ののろけが聞けると思ったのよ」

「今の流れで? ないない」

「あんたに期待したのが間違ってた」

 真里の苛立ちを表す様にガタンと電車が揺れる。

「で、どんな人?」

「サキさんって言うんだけど……この人」

 スマホを操作し、SNSの画面を見せる。

 真里は私が趣味用のアカウントを持っていることを知っていた。それが今見せたアカウントの投稿と似た内容であることも、もちろん知っている。
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