仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「それならいいけどね……」

 真里の行動力に呆れつつ、羨ましいとも思ってしまう。この行動力の半分でも私にあれば、今の夫婦生活を打開できるかもしれなかった。

(自分のことも隠してるような状態じゃ無理か)

 ガタンと電車が止まる。表示された駅名を見た真里が立ち上がった。

「あ。私、ここだから降りるねー」

「あ、うん。お疲れ」

(やりたい放題やって逃げたな)

 ひらひらと真里に手を振り、また動き出した電車に揺られる。

 “サキちゃん”から返事が来ているかどうか、見たいような見たくないような気がしていた。


***


 時計の針が二十時を回る頃、会社で机に向かっていた俺のもとに一通のメールが届いた。

(紗枝さんか?)

 一瞬期待して見るも、当ては外れていた。
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